僕は数学が大っ嫌いであった。
数学の教科書のねじりつぶし、出題者の顔をグーパンしたいと思ったほどに、中学高校時代は数学が嫌いだった。
その発端がなんだったのかはわからない。
小学生の頃から算数が苦手というのがあり、そこから苦手意識が芽生えたのかもしれない。
これは一般的に当て嵌まるかわからないけれど、僕は早生まれ(1~3月生まれの子)だったので、小学一年生の頃は物理的に脳の成長が他の子より遅れていたのだろう。
子供が論理的な考え方を習得するのは小学校一年生の頃というが、早生まれの子は医学的に見ても論理的な考えに追いついていないのである。
まあ、これはただの一説だ。三月生まれでも算数数学が得意で大好きという人はごまんといるだろう。
一度統計的に見てみたいものである。
ともあれ、僕がそういった身体的ハンデから算数に苦手意識を持ち、そして運の悪いことに二年生になっても中学生になってもその苦手意識が治らなかったので結果的に数学が苦手な文系となったのだ。
そして今日の話だが、僕は食塩水の問題をマスターしたのだ。
……それは中学レベルではないか?
その感想はもっともである。しかし僕は中学の頃からこの問題が大っ嫌いで、一切勉強をしなかった。簡単な、例えば濃度10%の食塩水100グラムの中に食塩はどのくらいあるか? という問題は習わなくてもわかったが、もっと複雑になるともう考えるのが嫌になってしまった。
食塩水の問題が出来なくても生きていける。そう思って僕は今まで食塩水の公式などを知らずに大学四年生まで生きて来られた。実際に食塩水の問題は生きていく上でなんの必要もなかった。
しかし、就職活動で食塩水の問題が出たのだ。ここにきて立ちはだかるか。僕はその会社を嫌いになって商品の不買運動をする程の嫌悪感を味わったのだ。
そうして迎えた今日、ふと何の気なしに自衛官の試験内容を見ていたら数学の分野で食塩水の問題がでる可能性が高いとあった。まだ自衛隊に骨を埋めるかは決まっていないが、試験は受ける予定である。いよいよ食塩水と向き合う時がきたか。
そう思って僕は食塩水の問題の解き方をググった。
その結果5分でマスターした。
公式も一瞬で理解した。どんな問題が来ても僕は食塩水の問題を解けるだろう。
こんなに簡単だったのか。食塩水どころか、僕は数学というものを凄く簡単に思える様になった。
ちょろい、ちょろすぎる。一体自分を含め世の中の中高生は3年も6年も費やして何を学んでいるのだろうか。中学生の数学の範囲は1日あればマスターできる。1日だ。応用問題を100点とかは難しいが、真っ白な状態からでも1日あれば7割は取れる。そう思える程に数学が簡単に思えた。
思えば僕は常に1年遅れた脳で数学に接してきたのだ。脳の成長がピークを迎えた今、数学を簡単に思える事が出来る。遅生まれの子は常に中学時代この様な感覚だったのだろうか、それは中々羨ましいコトである。
嫌悪感にまで至った苦手教科の数学であったが、実は一番簡単な教科だったのだ。
この事実にもっと早く気づいていれば何か変わっただろうか。もう少し勉強に対するモチベーションが上がっていただろうか。
いや悔やむことなどない、数学が出来なくて困った事は試験以外ではないし、どっちにしろ僕は文系に行っていただろう。
しかしまあ、あれだけ立ちはだかっていた食塩水がこんなだったとはなあ。なんだか世界に対する見方が変わったような経験だった。
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